
ジヴェルニー 訪問記 「モネの家と庭」
01)サン・ラザール駅から
時々小雨の混じる前日の曇り空が、ウソのような快晴だった。この日は晴れて欲しいと思っていた。パリを離れて、少し遠くまで行くつもりだったからだ。
行き先として選んだのは、ジヴェルニー。パリから列車で約1時間。モネが人生の後半を過ごした家と睡蓮の池がある。
ジヴェルニーに向かう出発の地である「サン・ラザ-ル駅」は、モネが繰り返し描いた駅として知られている。これからモネの家を訪ねようとする者の心を、おおいに盛り上げてくれる。ここはぜひ駅の様子を写真におさめよう、とモネの絵を連想できるような構図を探してカメラを片手に歩いていた。すると、紺色の制服を着た鉄道警備員のようなお兄さんに呼びとめられた。
「ボンジュ~マダム、駅の中では写真撮っちゃダメだよ、知ってるよね? カメラは しまって。写真はダメだよ!いいね?」
もっと他にもいろいろ言っていたと思うが、全部は分からない。とりあえず「写真撮るな」と「カメラはしまっておけ」を強調して言っているのは理解できた。優しい口調ながら、有無を言わせぬ迫力があった。
そうだった!海外に行ったら(日本でも、かな)空港や駅で写真を撮ってはいけない、と知識としては知っていたが、パリからの遠足に浮かれていた私は、すっかりそれを忘れていた。場合によっては、カメラを没収されたり、どこか警備室みたいな所に連れて行かれたりするらしい。私はカメラを持って歩いていただけだったから、注意のみで済んだのかもしれない。
どきどきした。うっかりしていると、些細なことで楽しいはずの旅行が台無しになる。私はここで、ゆるんでいた気を引き締めた。
モネは公式の許可をとって駅構内で絵を描いていた。
02)出発
11:03発ルーアン行きの列車は、ほぼ定刻どおりにサン・ラザール駅を発車した。私はまるで初めて電車に乗った子供のように、風景の全てを見ようと 2階席の窓に額をつけるようにして座っていた。
発車して10分も経つとパリとは街並が変わり、オスマン様式のアパルトマンと一軒家が混在するようになってくる。
そしてさらに5分ほど走ると、完全にオスマン様式は姿を消し、代わりに絵本に出てくるようなオレンジ色の屋根と白い壁の可愛い家が並ぶようになった。
発車から20分後には、もう完全にパリとは別世界になっていた。集落のある地域と、森の中を列車は交互に走っていく。時間の流れ方までが変わっていった。
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