
ジヴェルニー 訪問記 「モネの家と庭」
03) 空の色

「色」は、光によってもたらされる現象である。
光のないところに色は存在しない。
その意味で「色」は、「影」の兄弟のようだと思う。
太陽との位置が変われば、差し込む光が変わる。
光が変われば色が変わる。
この空の色は、いつも私が日本で見上げている空の色とは違う。
でも私は、この空を知っていると思った。
モネが描く空の色だ。
本当にこんな色をしていたんだ!
草原の向こうに、日傘をさしたカミーユが見えたような気がした。
04)風の音
列車をヴェルノンで降りた人達は、私も含めほとんどがジヴェルニーへ向かう観光客だった。人の流れに乗って歩いていくと、自然にバス停へ辿り着き、前の人と同じようにバスの運転手さんから往復の切符を買った。15分ほどでジヴェルニーへ到着。モネの家の入り口まではさらにバス停から5分ほど歩く。
帰りのバスのことが気になっていた。全ての乗客がバスから降りたのを見てから、運転手さんに帰りはどこからバスが出るか聞いてみた。
「ここからだよ。」と言いながら、手のひらサイズの時刻表を一枚、運転席のキャビネットから取り出して「最終のバスはこれだよ。」と18:25のところに赤いペンで丸印を書いてくれた。そうこうしているうちに、同じバスに乗っていた様々な国籍の観光客は姿を消していた。みんな、帰りのことは心配ないのだろうか。
辺りを見ると、バス停へ続く鋪装された大きな道路が通ってはいるものの、道沿いには民家もおみやげやさんもなく、あるのは草原と森だけだった。
大地と空のあいだで一人になった。それでも不安や寂しさは全く感じなかった。むしろ開放的で穏やかな気持ちになった。木の葉を揺らす風の音が、ここで聞こえてくる最大の音だった。
次はどこへ行こうか、今日残された時間はあとどれくらいだろうか、と気持ちばかり急いていたことに気がついた。楽しむための旅行なのに、次はあれをして、これを見て、とまるで仕事中みたいな心の動きをしていた。
自然の風景は、次のことを考えるのはやめて、今流れる時間を楽しむことを思い出させてくれた。 そう、何も急ぐことはないのだ。帰りは、来たバスに乗ればいい。
パリに戻れれば、それでいいのだから。

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