
ジヴェルニー 訪問記 「モネの家と庭」
07)睡蓮

ここは、モネによって作られた人工的な池である。モネの日本趣味を反映して、柳や竹など日本的な趣を持った木が多く植えられ、池には太鼓橋がかかっている。
ひんやりとして湿気を含んだ空気には、草の匂いが混じっている。立っている私の周りは、腰の高さくらいまでアジサイやコスモスや、その他名前の分からない数々の植物が茂っている。目の前では、柳の枝が風で微かに動いている。
池に目を移すと、緑色のはずの水面は空と同じ色をしていて、くっきりと雲までも写し出している。風があるのに、空を写す鏡となった水面は少しも揺れることがなく、硬く陽光を跳ねかえす。そっとつま先を降ろしたら、向こう岸まで歩いていけるような気さえする。
睡蓮は、本当にそこに咲いているのだろうか。私が今見ているのは逆さに写った鏡の睡蓮で、水面の下側にある睡蓮が本物なのではないか。空は写っているのではなく、水の底に存在しているのではないか。ふと、天地が入れ替わるような錯覚を覚えた。
晩年のモネの作品は、抽象的で逆さにしても分からないのでは?と感じることがある。それもそのはずだと思った。
いつの間にか上下が逆さまになる だまし絵のような景色の中で、私はいつの間にか自分が絵の中に入っていることに気が付いた。


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