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シャガール「夢の花束」・・1


今まで一度もオペラやバレエを見たことがない私にとって、パリ中心部にあるオペラ座は、市内の地図を把握するための単なる目印の一つにすぎませんでした。
そこに、このシャガールの天井画があると聞くまでは。


私がこの天井画を初めて見たのは、2006年8月のことです。
絵を観る者にとって、「天井画」には特別な魅力があると思うのです。絵を描く者にとっても、「天井画を描く」ということは、特別な意味を持つ仕事だったのではないでしょうか。

文化的に重要な建造物に天井画を残せるのは、現役中に認められた画家に限られます。ある建物の天井に、既存のちょうど良さそうな絵を見つけてきて後からはめ込むことは、普通は不可能ですから、あらかじめ目的やサイズや予算を明確にしたうえで発注されたはずです。
だから多分、死後認められた画家の作品に天井画はありません。

シャガールは巨匠といわれる画家の一人ですが、その画風はかなりの独自路線で伝統的とは言いがたいですし、万人受けするような画風を持った画家ではないと思います。

パリ国立オペラ座とシャガール? それは奇妙な取り合わせのように思えました。

 

シャガール夢の花束




不思議な明るさを持って軽やかに広がる絵。 距離があるので、ぱっと見ただけでは細部までは分かりません。分かるのは、豊かな色使いと、たくさんのモチーフが描かれているな、ということくらい。それでも、見上げた瞬間に魅了される作品です。

この下には、壮麗なシャンデリアや艶やかなワイン色の客席や複雑な形状の柱があります。 これらの存在感に負けないものにするためには、圧倒的な強い個性をもった画家の絵が必要だったことが分かります。シャガールと聞けば思い浮かぶ、ぐるぐる飛んで やわらかく舞うイメージそのままのような絵でした。一度観てしまうと、ここに収まる絵は他にはないような気がしました。


描かれている天井画は、14人の音楽家のオペラ作品を題材にしたものです。14ものモチーフが描かれているという事実が、この絵の大きさを物語っています。

オペラの作品名は、名前くらいは知っているものもあれば、初めて聞くものもありました。私がもう少しまともに14作品の内容について 知っていたら、この絵を観たとき違った視点を持てただろうと思います。もっと長い間 この高い天井を見上げていられたでしょうし、シャガールと対話ができたかもしれません。


【オペラ作曲者名/作品名】

外側の大きい円
内側の小さい円
ラヴェル/ダフニスとクロエ モーツアルト/魔笛 グリュック/オルフェとユリディス
ドビュッシー/ペレアスとメリサンド ムソルグスキー/ボリス・ゴドゥノフ ベートーベン/フィデリオ
ラモー(作品不詳) アダム/ジゼル ヴェルディ/ラ・トラヴィアータ
ベルリオーズ/ロミオとジュリエット チャイコフスキー/白鳥の湖 ビゼー/カルメン
ワーグナー/トリスタンとイゾルデ ストラヴィンスキー/火の鳥  


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