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ダフニスとクロエ


「ダフニスとクロエ / Daphnis et Chloé」 フランソワ・ジェラール作 
 1824〜1825年 <ドゥノン翼・2階/フランス絵画の大作>


西洋の絵画を見ていると、頻繁に出会うテーマがあります。 「ダフニスとクロエ」もそのひとつです。

「ダフニスとクロエ」は2〜3世紀頃、ロンゴスというギリシャ人によって書かれた物語で、若い二人が主人公のラブストーリーです。

絵画だけでなく、音楽や文学にもこの作品をテーマにしたものが見られます。シャガールが挿し絵を描いた絵本や、モーリス・ラヴェルのバレエ音楽として、ご存知の方も多いかもしれません。


* * *「ダフニスとクロエ」あらすじ * * *

舞台はエーゲ海に浮かぶレスボス島。ダフニス(男子)とクロエ(女子)は捨て子で、それぞれ別の羊飼いに育てられる。やがて美しく成長した二人は、出会って恋に落ちる。ダフニス15歳、クロエ13歳。

しかし「恋」というものを知らない二人は、相手を求める自分の感情をどう処理してよいか分からず、「これは病気なんだ」と思い込む。

そこへある老人が現れ、エロスの存在と恋に効く薬を3つ教える。

恋に効く薬・・(1)抱き合う (2)接吻する (3)衣服を脱いで一緒にねる

「自分たちは恋というものに落ちているんだ!」と分かった二人は、さっそく教わったことを実践する。(1)と(2)は難なくクリア。でも(3)がよく分からない。

おじいちゃんもそこまで教えるなら全部教えればいいのに、「一緒に寝る」とだけ教えたので、二人は本当にただ一緒に寝るだけだった。

「どうもおかしい。」と思っていたところに、美形のダフニスくんに目をつけていた年上のお姉さまが登場して、手ほどきをすることになり・・。

都市間の闘争があったり、海賊に襲われたり、といったエピソードを交えつつ、最後は、捨て子だった二人はどちらも高貴な生まれであることが判明し、本当に結ばれて、FIN

* * * * *


と、大雑把なまとめですが、だいたいこのような内容です。

相手を思う自分の気持ちをどうしたら良いのか分からず、戸惑う二人。 少年と少女を通じて、誰もが持つ初恋の記憶を思い出してしまうようなストーリーです。

作者は序文でこんなことを言っています。

「この物語が、すでに恋をしたことのある人にはその思い出を蘇らせ、まだ恋を知らぬ人にはその手引きとなることを願っている。この世に美しいものがある限り、目がものを見る限り、エロスの手を逃れた者はかつてなく、これからもあり得ぬからである。」

恋に落ち、相手を想い、悩む。遥か昔から人間が繰り返して来たこの営みは、現在も途絶えることはありません。人類にとって普遍的なテーマであるが故か、2〜3世紀頃に描かれたというこの古い物語が、時代も、洋の東西も、ジャンルも越えて、多くの芸術家たちにインスピレーションを与え続けているのです。

ルーヴル美術館にも「ダフニスとクロエ」をテーマに描かれた作品があります。

ダフニスとクロエ

フランソワ・ジェラール作「ダフニスとクロエ」


ダフニスとクロエ目を閉じて、ダフニスの膝に 頭を乗せるクロエ。クロエのために、一心に草の冠を編むダフニス。安心しきって幸せそうなクロエの表情に心が和みます。

しっとりとした森の空気、土や草の匂い、水の流れる音、微かに降りてくる木漏れ日、二人の気持ち。足の裏に感じる土の感触までリアルに想像できるような 五感のみならず 六感にも訴えてくる作品だと思います。

ジェラールが活躍していた頃の美術の世界では「絵画とはこう有るべき」という概念があり、そこに合致するような作品だけが世に認められていました。

そのため、この頃の絵画は、作者が違ってもなんとなく絵の雰囲気や傾向が似ています。その意味では、面白みに欠けるという見解もあるでしょう。

しかし、新古典主義の王道とも言うべき端正な筆致は、この古い物語の主人公たちが持つ純粋さや瑞々しさを表すのに、とても適していると思うのです。



ルーヴル美術館ドゥノン翼この作品が展示されているのは、ルーヴル美術館のドゥノン翼一階、フランスの大作が多数並ぶギャラリーです。この作品も縦横2メートル以上ある大きな作品です。

周辺には、世界史や美術の教科書などでも馴染みのある作品が多く、人気のあるエリアです。

作者の「ジェラール」は、ダヴィッド( ← 新古典主義の大御所で「ナポレオン一世の戴冠式」を描いた人です)の弟子でもあった画家ですが、日本ではその名はあまり知られていないかもしれません。

アモルとプシュケでも、「この絵だったら見たことある!」と言う方がきっと大勢いらっしゃるのではないかと思います。

ジェラール作「アモルとプシュケ」

こちらもルーヴル美術館の所蔵作品です。ヴィーナスの嫉妬を買ってしまうほどの美貌の持ち主であるプシュケ(人間)と、女神の息子アモル(クピド)の恋がテーマです。

この作品は、パリでも人気があるらしく、ルーヴル内のミュージアムショップでも関連商品をたくさん見かけます。


ジェラール作品の中では、おそらく一般的には 「アモルとプシュケ」の方が有名だと思います。が、「ダフニスとクロエ」も負けず劣らず美しい作品なので、ルーヴルに行ったら、ぜひこちらもじっくり見ていただきたいと思います。

ダフニスとクロエ


もし私が、当時のパリに住むお金持ちのマダムだったとしたら、この絵を買い取って自宅のサロンに飾りたいと思ったはずだ・・などど想像しながら、長い時間 私はこの絵の前のソファに座っていました。

 


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