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演奏する人々 

パリを歩いていると、楽器を演奏する人々によく遭遇する。
短い旅行で訪れた際にも、なんとなくそれは認識していたのだが、ひと月ほどパリにいた時には、本当にパリの街角には音楽家が多いな〜と実感した。

ルーヴル美術館の中庭や、パレロワイヤルの入口、テルトル広場など、人が集まる広場のような場所では、音楽家がいないことの方が珍しいと思う。

どこからか聞こえてくる優雅な調べに導かれて行くと、演奏しているのは、いかにも繊細な芸術家風の男性であることもあれば、あどけなさの残る学生らしき女性のこともある。

聞こえてくる音楽を演奏しているのがどんな人なのか、想像しながら歩くのも楽しかった。


* * * * *


メトロに乗っていると、どこかの駅から楽器を持った音楽家が乗って来て、車内で演奏を始めることがある。この場合、なぜかアコーディオン奏者である確率が高いような気がするのだが、他にもフルートだったりヴァイオリンだったり、演奏する楽器は様々で、声楽家も時々見かけた。

いずれも高い競争率のオーディションを通った人だと聞いている。

メトロ内で2〜3曲演奏した音楽家は、小さな紙コップを持って狭いメトロの通路を行き来する。そして、その車両にいる乗客に金銭を要求する。「勝手に演奏して、勝手に聞かせておいて、お金を要求するなんて! 」と滞在当初、私は納得できない思いでその様子を見ていた。

しかし、まわりの乗客の反応を見ていると、意外にも紙コップに小銭を入れる人が多いのである。日本の地下鉄でこんな状況を経験することはまずあり得ない。当然ここは無視するのが基本だろうと思っていた私にとって、それは衝撃的な光景だった。

差し出された紙コップにお金を入れるのは、どういう人だろう? すごくお金持ち? それとも気が弱くて断れない人? などと疑問に思い、メトロに音楽家が乗って来ると、私は周りをよく観察するようになった。

そして分かったことは、お金を出す人に 年代や性別や雰囲気などの共通点はない、ということだった。ただし一つだけ、おそらくその人たち全員が持っているのが「演奏が気に入った」という思いである。「この演奏は良かった」と思った人で、且つ すぐ出せる小銭を持っている人が、いくらか渡しているようだった。気付いてしまえば、ごく当たり前の結論である。

そこで私も滞在後半は、「演奏を楽しませてもらったな」と思ったらお金を出す、「わ〜イケメンだ〜♪」と思ったときも出す、演奏も容姿もあんまり好みじゃなかったら出さない、ということにした。
どこかで見かけた人の真似をして、細かい額の小銭をジーパンの小銭ポケットに入れて、いつでも出せるようにしておいた。あまりエレガントな所作とは言えないが、メトロの中でバックからお財布を出して小銭を探すのは危険だし、タイミングを逸することにもなるからだ。

以降、メトロで音楽家に遭遇するのが楽しみのひとつになった。
いろんなことがあって、メトロはけっこう楽しい。


* * * * *


車内に乗り込むのではなく、駅構内(改札からホームまでの通路など)で演奏している音楽家もいる。これもパリにしばらく滞在して分かったことだが、駅構内型の音楽家は、毎日違う駅に出没する人と、いつも同じところで演奏している人に分かれるものらしい。

私がよく利用していた滞在先の最寄り駅には、年配のヴァイオリン奏者がいた。朝〜昼にかけて出かけるときにはまだいない。夕方になって戻ってくると、改札に続く階段の登り口付近のスペースに場所を確保し、誰もが知っているような有名な曲を中心に演奏している。

しかもこの人の場合は、バックにオーケストラがついていた。最初、ホームでその音楽が聞こえてきたとき、どういうことなのかよく分からなかった。明らかにメインはヴァイオリンの生演奏なのだが、聞こえてくるのはヴァイオリンだけではない。大人数で演奏しているのかというと、それはあり得ないし、音質的にも何かがちょっと違う感じ。

不思議に思って近づいて見てみると、ヴァイオリンを弾いている男性の足下にCDプレイヤーが置いてある。どうやら、カラオケ?のようなオーケストラのCDに合わせて、ヴァイオリンソロの部分をその人が演奏しているらしい。そんなCDがあるとは!全然知らなかった。

以前、大正琴の通信販売で「今なら伴奏のカラオケテープをお付けします♪」みたいな商品を見たことがあるのだが、それと同じような感じだろうか。私が知らないだけで、そういう音源はどこにでもあるものなのだろうか。

毎日そんなことを疑問に思いながら、メトロ構内に流れるチャイコフスキーやモーツァルトに耳を傾けた。


* * * * *

どこかの駅のホームで一度だけ見かけたのが、木琴を演奏する人である。外出先でたまたま一度見ただけなので、この人も毎日同じ場所にいるのかどうかは分からない。

木琴奏者木琴奏者は、たぶんパリでも珍しいのではないだろうか。向かいのホームにいる人も、集まって来て反対側から注目していた。

私が木琴を間近で見たのは、小学校の音楽室で見て以来である。木琴ソロ生演奏を聞くのは、人生で初めてだ。

この手の動き。「あー木琴って、こういう楽器だったんだ!」と演奏する様子に見入ってしまった。音色には温かみがあって、しかも力強い感じがする。楽しい気持ちになるような、心地良い音楽だった。


近くにいた日本人の二人連れが「こんな大きいの、どうやって運んで来たんだろうね?」と話していた。キャスターがついてはいるが、確かに これを引いてメトロの狭い通路を通り、階段を昇り降りするのは大変そうである。

しげしげと眺めたところ、どうやらこの木琴は、組み立て式のようだと分かった。おそらく下に置いてあるのがキャリーケースだろう。ケースの大きさから想像するに、かなりコンパクトになりそうだ。解体して収めるところを見てみたいものである。

そもそも木琴って、組み立てて使うのが普通なのだろうか? それともこの木琴だけが特別?


世界は、私の知らないことで満ちているのである。



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