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クロード・モネ 「アルジャントゥイユのひなげし」


モネといえば、睡蓮。そのイメージは、「ダ・ヴィンチといえば、モナリザ」と言うのと同じくらい一般に広く定着していると思います。しかしながら、私個人の好きなモネ作品ランキングでは、1位は睡蓮ではありません。決して睡蓮が嫌いというわけではなくて、もっと好きな作品が他にあるということです。

それは、この小さな作品「ひなげし」です。
オルセ-美術館で、特別扱いされることもなくひっそりとかかっています。


ひなげし



ポピーが風にゆれる丘。妻と息子はゆるやかな斜面を降りてきます。日の光。風がたてる葉の音。草の匂いもしてきそうです。


ひなげしあまりにも普通に描かれているので 気付かない人もいるかもしれませんが、よく見ると 妻と息子は丘の上と下の2ケ所に描かれています。画面を斜めに横切るように、丘を降りる前と後の二人を描くことで、ゆったりとした時間の流れを表現したかったようです。ポピーの丘を降りてくる妻と息子に、やさしい視線が注がれていたことが想像できます。

妻カミーユは、若き日のモネと共に生きた女性です。二人目の子供を生んだ後、32才で亡くなっています。二人はとても深い愛情で結ばれた夫婦だったといいます。それはそうでしょう。一枚の絵のなかで2回も描くくらいですから。この絵に限らず、モネが残した人物画はカミ-ユをモデルにした作品が圧倒的に多く、そしてそのどれもが優しい光に満ちています。

妻としての、あるいは母としてのカミーユ。幼いジャン。それから二人を見ていたモネ。 この絵を観る人は、いずれかに自分を重ねることができると思います。私の場合は、小学生の時に 近くの川の河川敷で父と自転車の練習をしたことを思い出します。妻でも母でもない私は、ジャンの目線になるのです。思い出すその場面は、 この絵とは全く違う情景だけど、それでもなぜか懐かしい気持ちで幼い日を連想します。親子の愛、夫婦の愛、など普遍的なものが描かれているからでしょうか。

モネは、印象派という一つの流れを作るのに重要な位置を占めていた画家です。それだけに、実験的とか挑戦的などと言われるような作品もあるし、オランジュリ-美術館に所蔵されている睡蓮の連作のように、誰もが圧倒されてその凄さを認めるしかない というような作品もあります。


この作品には、そういった「 驚くべき世紀の大作!」とか「時代を変えた問題作!」という迫力はありません。でも私は、明るくのどかで、わずかに悲しくて、愛情溢れる「ひなげし」を、心のランキング第1位に置いておきたいと思うのです。



「アルジャントゥイユのひなげし」 クロード・モネ作
(Coquelicots à Argenteuil) 1873年 50×65cm 油彩  
 オルセー美術館所蔵



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